令和4年の出生数は、80万人を割り込むのでは?というニュースが、年末の日本を騒がせました。
1973年の第2次ベビーブームをピークに、出生数は右肩下がりとなっています。
この状況は、小学生から高校生を客層とする塾経営にも影響を及ぼしています。
このまま少子化が進めば難しい局面を向かえるのではないかと言われていますが、起死回生の対策はないのでしょうか。
このコラムでは、少子化が進む中でも塾経営を安定させるポイントや、具体的な対策について解説していきます。
目次
●少子化だけではない!?塾経営が難しい理由
・少子化と通塾率の関係
・変化するニーズへの対応
●塾経営安定化のポイントは綿密なマーケティング
・リサーチから始める
・ターゲットを決める
・塾の強みをアピールする
少子化だけではない!?塾経営が難しい理由
帝国データバンクによる教育関連業者の倒産動向調査(2018年)では、2018年における学習塾の倒産件数は35件で、過去最高となったと報告されています。
少子化が進んでいるのだから塾経営が難しいのは当然ではないかと思われそうですが、実は、原因は少子化だけではないのです。
少子化と通塾率の関係
たとえば、文部科学省による調査結果「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査報告」(2008年)によれば、昭和60年(1985年)における中学3年生の通塾率は47.3%でしたが、それが平成19年(2007年)には65.2%まで伸びています。
また、高校生に至っては、1996年から2015年までのおよそ10年間で、通塾率が15%から27%までほぼ倍増しているという調査結果もあります。
さらに、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、2004年から2021年の間、学習塾に通う生徒数は毎年増加しています。
この結果は、塾経営における市場全体の伸びとして捉えることができます。
しかし、その一方で塾の数も増加し、結果として生徒獲得の競争が激化しています。
この競争を勝ち抜き、安定経営を実現するには、適切な集客戦略と、変化するニーズへの対応が不可欠です。
変化するニーズへの対応
少子化の影響を受けつつも、学習塾業界の収益は増加傾向にあります。
その理由としては、集団指導よりも個別指導の需要が増加したことにより客単価が上昇したこと、そして幼稚園児など新規客層のニーズが高まったことが挙げられます。
かつての集団指導から個別指導へ人気が移ったのは、少子化により子ども一人ひとりにかける教育費にゆとりが生まれ、学校の集団教育では難しい個人の習熟度に合わせた補習を求める生徒や保護者が増えたからだと言われています。
また、通塾の低年齢化には、小学校での英語やプログラミング教育の必須化に伴い、それらの学習を早期に習熟したいという新たなニーズが生まれたことが関係していると思われます。
さらに、新型コロナウイルス感染症対策として、オンラインや通信学習の需要が高まる中、Edtech教材の導入など、ニーズに合わせた教育方法を提供することもフランチャイズ塾経営の成功への課題となるでしょう。
これらの多様化するニーズに迅速に対応し、必要な教育環境を整備する能力が、生徒獲得における強力な集客戦略となります。
社会の変化に無関心で塾経営を続けていると、生徒はより良いサービスを提供する塾へと流れていきます。
塾経営の難しさは、少子化だけでなく、変化し多様化するニーズをどうとらえ、それにどう対応するかという点にあると言えます。
そのためには、自塾の強みを把握し、他塾との差別化ができているか、そしてその先にある「こんな塾を作りたい」というビジョンが明確であるかが重要となります。
塾経営安定化のポイントは綿密なマーケティング
競合を生き抜いて存続する学習塾は、しっかりとしたビジョンを持っています。
このビジョンを形成するために重要なのが、教育産業の特性を考慮した市場調査、つまり「マーケティング」なのです。
安定した塾経営を続けるためには、集客が欠かせません。
生徒数を確実に増やすためには、自塾の存在する地域の綿密なマーケティングを実施し、生徒や保護者のニーズを正確に把握することが不可欠です。
マーケティングで得た情報をビジョンにつなげ、自塾の強みを最大限生かせる塾経営を目指しましょう。
リサーチから始める
まず、自塾のある地域の情報を集めることからスタートします。
リサーチ内容の例としては、
〇どんな学校があるか。生徒数はどのくらいか。
〇生徒が希望する進路にはどのようなものがあるか。
〇学校と塾の距離感はどのくらいか。来塾するための交通手段は?
〇自塾の他に、どのような学習塾があるか。
などがあります。
学校数やその生徒数、進路先などは、教育委員会や学校のホームページで調べることができますので、インターネットを活用するのも手です。
ターゲットを決める
リサーチで集めた情報を分析し、近隣の他の塾となるべく競合しないようにターゲットを絞り込むことが重要です。
ターゲットは、具体的に設定することがポイントです。
例えば、小学生向けなら「私立中学の受験を考えている児童」、中学生なら「学校の授業についていけるよう補習を希望する生徒」、進路のニーズが広がる高校生に対しては「中堅の国公立大学を目標としている生徒」、「学校推薦や、総合型選抜での入試を目指す生徒」という具合です。
リサーチしたライバル塾が取りこぼしている層をターゲットとするのもひとつの手です。
もしも都市部で生徒数が多い地域なら、理数系専門、医学部受験専門など、競合のない一定の専門分野に特化した学習塾にするのもいいでしょう。
塾の強みをアピールする
競合する他の塾と比較して、自分の学習塾がいかに優れているか、そのポイントをアピールします。
どんなに些細なことでも、他塾との差別化は大きな武器となります。
しかし、生徒や保護者のニーズと一致していなければ振り向いてもらえません。
ターゲットとする生徒の層に向けて、最も響く強みを見つけましょう。
学習塾選びの動機についての様々な調査がありますが、ほぼ全ての調査結果において選択動機の第1位を占めるのが「家や学校から近くて通いやすいこと」です。
次に、子供の目的に合ったカリキュラムがあることや、塾長や講師とのコミュニケーションがスムーズであること、講師との相性などが挙げられます。
通いやすさをアピールすることはもちろんですが、差別化を図るためには、自塾のカリキュラムをターゲットに合わせて設計することが重要です。
また、講師はそのカリキュラムに合わせて最適な人材を募集し、塾での研修を充実させてスキルアップに努めることが、生徒の満足度向上に繋がります。
塾長や講師とのコミュニケーション手段を工夫し、それをアピールすることも有効です。
また、保護者との定期的な面談を行ったり、休塾した場合の振替授業を充実させるなど、生徒への細やかな配慮を強みとする方法もあります。
いずれにせよ、マーケティングを通じて見つけた競合他社にはないポイントを強みとしてアピールすれば、差別化を図ることが可能です。
まとめ
少子化が進んで難しいと言われる塾経営ですが、その本質は、競合による生徒の奪い合いであるということがデータで示されています。
「少子化だから生徒が減るのは仕方がない」とあきらめる前に、綿密なマーケティングを行って変化するニーズに対応し、自塾の強みを活かしたビジョンを打ち出すことが他塾との差別化を促進し、塾経営の安定化につながっていくと言えます。
つまり、塾の経営者は、自分自身が常に学習を続けることが重要だということになります。
そのためには、情報交換のできる場があることが大きなメリットになるでしょう。
マーケティングや情報交換の場を充実させ、それでつかんだニーズに素早く対応していくには、大手学習塾が持つ塾経営ノウハウと、、個人経営のフットワークの軽さを兼ね備えたフランチャイズ塾に加入したり、個人塾から転向したりすることもひとつの方法です。
個別指導学院Hero’sには、フランチャイズの強みを活かした塾経営により、少子化という難しい局面をチーム全体で乗り切る仕組みがあります。
個人塾では難しい塾オーナー同士の情報交換の場も充実しています。
興味のある方は、ぜひホームページをご覧ください。